アパマンハム「HFへの挑戦」~ノイズ対策:ノイズキャンセラーの自作(調整編)

2017/08/23

 組み立て後は、調整になります。


①アンプ部のゲイン調整

まず、RFアンプのゲインをVR9で、とりあえず+3dBに調整しました。次にノイズ信号系のゲインを調整します。ノイズアンテナの感度にもよりますが、今回はCISPR・FCCで良く使われる 直径60センチメートルの磁界ループアンテナ(~30MHz)を自作して用いましたので、比較的高いゲイン設定にしました。VR5を最大にした状態でVR3で最大ゲイン、VR5を最少にした状態でVR6で最少ゲインを設定します。最大で30dB程度になるはずです。


ノイズアンテナに適当な信号(たとえば7MHzの信号)を入力して、VR4の移相量の変化に対して、出力信号の変化が比較的少なくなるように、VR2を調整します。50Ω程度になると思います。


②キャリア検出感度調整

まず、CW出力を最小にします。FT-991のTUNEボタンを長押してFC-40をチューニングする状態にし、余裕をもってリレーが反応するように、C13とVR1を調整します。ログアンプがリレー切替ノイズを拾うことがある場合は、C12、C13を大きめの容量にする必要があるかもしれません。


③リレー遅延時間調整

キャリア検出からキャリア未検出状態になった後、適当な遅延時間(設計値は、約200mS)をVR7で調整します。


④PTT遅延時間調整

FT-991用のPTTアダプタとマイクを接続してPTTボタンを押し、PTT OUTの遅延時間(設計値は、約50mS)をVR8で調整します。


ノイズキャンセラーの効果は、ノイズアンテナの配置によって大きく変わります。基本は、メインアンテナとノイズの相関があり、ノイズを拾いやすい配置(設置角度・高さ)を見つける必要があります。メインアンテナとノイズアンテナの距離は、近寄りすぎても、遠すぎても良くないようです。試行錯誤が必要で、じっくり探すことで良い結果が得られます。


下記は、電源OFFで、ノイズキャンセラーが動作していない状態です。黄色部分は、外来ノイズです。(7MHz帯の交信信号が少ない時間帯でした)



電源投入後、移相量とゲインを調整し、ディップポイントを見つけます。下記のように、外来ノイズが低減できました。この例では、RFゲインが+3dBで、ノイズレベルが-11dB(Sメーター読み)ですので、都合14dB程度のS/Nの改善になるのではないかと思います。ノイズアンテナの設置チューニングがまだ十分にできていませんが、効果は出ています。



次は、画面の拡大です。



下記は、今回自作したノイズアンテナです。プラスチック段ボールと結束バンドで、箱を斜めに切断した形を作りました。重りを段ボール下部に置いて、ベランダの適当なところに自立できるようにしました。



しばらく試行錯誤して、効果・問題点など見極めたいと思います。参考にしていただければ幸いです。

(再クロール更新:2022/12/22)

アパマンハム「HFへの挑戦」~ノイズ対策:ノイズキャンセラーの自作(製作編)

2017/08/22

 回路図中の3モジュールは、表面実装部品のプロトタイピング用ガラスユニバーサル基板(秋月電子通商)を用い組み立てました。BPFモジュールは、1608サイズのチップ部品で、その他は、2012サイズのチップ部品を使用しました。本体部は、両面スルーホールユニバーサル基板を用い、ベタアースは、低周波シールド用銅箔テープを加工して使用しました。


参考までに、入手しにくい部品の入手先をご紹介します。3SK206・1SS226は、「ビジネスシステム ネットショップ」、たまたま手持ちのJSPQ-80を使用しましたが、JSPQ-65は、「ミニサーキットヨコハマ」、B500Ω2連VRは、「eBay tayda2009」で、今のところ入手可能だと思います。なお、同軸リレーは、CX-120P(max. 150W)がポピュラーですが、中古・新品ともに、eBayに出品されています。CX-1051P(max. 50W)を含めて、ヤフオクに出る場合もあります。


下記は、本体部の基盤表側と裏側です。





下記は、組み立て後、後ろ側から見た内部構造です。



下記は、FT-991用のPTTアダプタです。協和ハーモネットのクロス変換アダプタHLA-T-CR4を改造して、PTT入出力用ジャックを取り付けました。PIN2がGROUND、マイク側PIN3がPTT入力、FT-991側PIN3がPTT出力となります。


(再クロール更新:2022/12/22)

アパマンハム「HFへの挑戦」~ノイズ対策:ノイズキャンセラーの自作(設計編)

2017/08/21

 ループアンテナの設置後、7MHz帯のノイズ対策をしようと、雑音源を探しましたが、残念ながら特定ができませんでした。これが都市雑音の性格ではないでしょうか。


そこで、世の中で行われているノイズ対策を調べたところ、ノイズキャンセラーが浮上してきました。メインアンテナと相関がある比較的大きなレベルのノイズをノイズアンテナから受信すれば、バックグランドノイズを低減できる仕組みです。ポピュラーな製品を調べてみると、ANC_4とMFJ-1026が良く紹介されていました。製品マニュアルも公開されていましたので、回路図もありました。よくできた製品のようですので特徴をまとめました。ただ、海外製で、比較的高価な点が問題でしたので、自作に挑戦しました。


ANC_4の特徴:

・シンプルな操作で好感が持てる

・位相調整が周波数にかなり依存してしまう

・ノイズキャンセラー通過に伴うゲインロス6dBが発生してしまう

・ランプによる保護回路のロスがある

・0.5MHz~80MHz信号が扱える

・最大許容出力は、250Wである

・キャリア検出回路を内蔵し、リレーの遅延時間切り替えができる

・中波放送局対策のノッチ回路が用意されている

・比較的高価である


MFJ-1026の特徴:

・ロッドアンテナが付属しているが、環境によっては使用できない

・位相調整が周波数にかなり依存してしまう

・ランプによる保護回路のロスがある

・プリアンプを内蔵して、ゲインを調整できる

・1.8MHz~30MHzの信号を扱える

・最大許容出力は、100Wである

・PTT入力付のキャリア検出回路を内蔵し、リレーの遅延時間切り替えができる

・中波放送局対策のHPFを内蔵している

・比較的高価である


自作では、JA1DIさんの回路が見つかりました。シンプルな回路に好感が持てました。


以上より、FT-991Mとの組み合わせを想定した、次のようなターゲット仕様を決めました。

・ゲイン・位相・極性切替のみでシンプルな操作

・周波数に依存しにくい広範囲な移相範囲(±90°)、移相回路ゲインの変動が少ない移相回路

・ノイズアンプのゲインは、最大ゲイン・最少ゲインを設定できる

・プリアンプ機能を内蔵し、ゲイン調整ができる

・ランプを使わないロスが少ない保護回路

・1.8MHz~54MHz信号が扱える

・最大許容出力は、50Wである(切替リレーに依存)

・キャリア検出回路を内蔵し、FT-991のPTTに対応する入出力を備える

・放送局対策として、1.8MHz~54MHzのBPFを内蔵する

・できるだけ市販(安価)の部品で構成する

・コンパクトなサイズにできる


こだわった採用部品

・2 WAY-90°広帯域スプリッター(Mini-Circuits JSPQ-80、できればJSPQ-65)

・50Ω信号系に対応できる高gmかつゲイン調整が可能なDUAL-GATE GaAs MESFET(3SK206)

・保護回路に0.1A型PTC(3.5Ω typ.常温)と小接合容量(0.9pF typ.)ダイオード(1SS226)

・広範囲のキャリア検出が可能なログアンプ(AD8307)

・タカチ YM-150(W150xH40xD100)に地震対策ゲルシートの足(FT-991上に安定設置可能)


下記が全体の回路図になります。ノイズアンテナの入力部には、メインアンテナとの干渉を低減するため、コモンモードフィルターFL1を入れています。表面実装の部品を集めて、3個の内部モジュール化を行い、コンパクト化を図っています。近くに、中波、FM、地デジの放送局があるため、BPFを内蔵させました。

       HF帯 ノイズキャンセラー回路図(HF Noise Canceller Schematics)

(再クロール更新:2022/12/22)

アパマンハム「HFへの挑戦」~ループアンテナの設置

2017/08/20

 さて、次にループアンテナをできるだけ冷蔵庫から離してベランダに設置しました。その結果、冷蔵庫からの輻射の影響はほとんどなくなりましたが、外部(マンションの他室を含む)雑音が大半となりました。



FT-991MのSメーター読みでAMP1設定でS5~S7のノイズが観測され、FT-991Mにウォーターフォール表示機能があるにも係わらず、信号がノイズに埋もれ、交信信号が識別が難しい状態になります。また、受信してもノイズが非常に大きな状態になります。


7MHz帯スペクトルのウォーターフォール表示例です。全体にノイズフロアーが高く、黄色い部分がレベルが高いノイズです。


(再クロール更新:2022/12/22)

アパマンハム「HFへの挑戦」~都市雑音の洗礼

2017/08/19

 今回は、FT-991M+FC-40の組み合わせで、設置前ループアンテナの受信評価を行いました。ベランダに簡易設置して、チューニングが取れるかを確認しました。1.8MHz帯、3.5MHz帯、7MHz帯、18MHz帯、21MHz帯、24MHz帯、29MHz帯、50MHz帯で問題なくチューニングが取れました。ここまでは、ルンルンでしたが、いざ受信すると、都市雑音の洗礼が待っていました。


特にひどいのは、7MHz帯で、まず短波ラジオ(ELPA ER-C57WR)で犯人を捜し、電源OFFしてSメーターで相関を確認しました。主犯格はVDSLモデムと冷蔵庫でした。AMP1設定でS9~S9+10dBと雑音の嵐状態でした。ループアンテナのゲインが高いようで、FT-991MのSメーター読みで入力電圧がVDSLモデムから約100uV、冷蔵庫から約300uVと散々です。


まず、VDSLモデムからのノイズ対策です。VDSLモデムは、ITU-T G.993.2(通称VDSL2)規格のモデムでした。ITUの規格書を読むと、アマチュア無線への妨害対策のため、ノッチ対策が推奨されていましたが、VDSLモデムラインに-10dB観測プローブを自作して観測したところ、ノッチ対策はされておらず、30MHzまでのアマチュア無線周波数帯が堂々と使用されていました。VDSLモデムラインは、電話線(ツイスト線)で、対称性が保たれていれば、障害はかなり抑制されますが、やはり漏れはあるようです。


社団法人「情報通信技術委員会」が業界として定めた標準規格「メタリック加入者伝送システムのスペクトル管理」によれば、ノッチ対策がされることになっているにも関わらず、ベストエフォートの伝送帯域が約10%ダウンするため、伝送帯域優先で、使用されているようです。この点をNTT西に書面で改善をお願いしました。サポートの方が現場確認に来ていただき、その書面をお渡ししました。何週間たった後、自室のみのノッチ対策をマンション内の集合装置に設定変更してくれました。他室は難しいとのことでした。


下記は、対策前の-10dB観測プローブによるモデムラインの7MHz帯のスペクトルです。


次は、対策後のモデムラインの7MHz帯のスペクトルで、約24dBの減衰がありました。合わせて、インターンネット接続機器(VDSLモデム・ルーター・WiFiアクセスポイント)のACアダプターにフェライトコア(FT114-43)に13ターンの対策を行い、電話線の出口直前にも同様にフェライトコアに13ターンして信号漏れ対策を行った結果、FT-991MのノイズレベルがS1~S3程度まで改善し、普通のノイズレベルにできました。


次は、冷蔵庫です。輻射ノイズは、微弱無線局のレベルですが、メーカーのPanasonicにクレームしても、製品として問題ないので(法令に触れているわけでないとの暗黙の回答)、対策はできないとのことでした。後日、「静岡県西部ハムの祭典」に出展していた総務省東海総合通信局の電波監視車両の担当者に相談しましたが、自分でアースなど対策するしかないとのことでした。そこで、ループアンテナの設置後、必要に応じて、対策をすることにしました。冷蔵庫ドアの押ボタン部分からの輻射が大きかったため、電気的に浮いていたドア部分を本体アースに落とすためのビス・アース平織線を用意しておきました。

(再クロール更新:2022/12/22)

アパマンハム「HFへの挑戦」~多巻きスモールループ(MLA)の製作

2017/08/18

 144MHz帯、430MHz帯は、ベランダにモービル用のアンテナを設置して、容易に開局できましたが、HF帯の開局は、アパマンハムにとっては、ハードルがかなり高くなります。


今回は、しばらくぶりにブログを更新します。


マンションのベランダから長く大きいアンテナを出すと、他室へかなりの違和感を与えてしまいます。このため、コンパクトなHFアンテナとして、多巻きスモールループにターゲットを絞りました。


多巻きスモールループについては、MK-4A、MK-4Bなど、横浜のJA1QOJ村吉さんが有名です。今回はこのモデルを参考に、自作に取り組みました。


いずれも、20m前後のループエレメントからなっているため、加工の容易性からエアコン用銅パイプを使うことにしました。タイミング良くオークションで、「桃陽電線製エアコン配管用被覆銅管シングルダイヤSD-420 20m」が安く出品されていたので、落札し、活用しました。メリットは、アルミより重量がありますが、加工が容易であること、半田付けができること、被服層があるので、錆対策が不要であることです。


MK-4A、MK-4Bを参考に巻き数は6回と決めましたが、問題は、ループの直径をどれくらいにしたらよいかでした。


アンテナシミュレータを使うことも考えましたが、簡単なモデルを用いました。各HF周波数帯において、エレメント上の電流分布を6回巻き分ベクトル加算し、各巻線間で打消しが少なく効率が良い直径を求めました。特に、7MHz帯と50MHz帯の効率を重視して確認したところ、直径102センチメートル、全長20.8メートル(接続部分に同軸ケーブルを追加)、6.25回巻きとしました。


同様の計算をMK-4A、MK-4Bについても確かめましたが、3.5MHz帯を除けば、MK-4Bより効率がよさそうな結果が出ました。


水道用パイプを加工して、結束バンドで組み立てました。


(再クロール更新:2022/12/22)