アナログレコードをハイレゾで楽む~レーベルカバーの自作

2020/04/25

 さて、次はレコード盤の調達です。身近なハードオフや、ヤフオクからCD化されている比較的新しいレコード盤に注目しました。CDとの聴き比べができるようになります。聞きなれたクラシックから交響曲・ピアノソナタ・ピアノ協奏曲・バイオリン協奏曲、洋楽からビートルズの中古盤を入手しました。ジャケットの汚れは良いのですが、中古盤面を見ていくと、汚れ・埃・カビなどが非常に気になりました。そこで、中古のレコード盤をすべて洗浄することにしました。


ネットを調べると、念入りな洗浄のためにレコードレーベルカバーなるものが便利であることがわかりました。通信販売を調べると、それほど安くはありませんので、自作できないかと、ネット・ホームセンター・100円均一ショップなど足を運びながら調べたところ、使えそうな部材を見つかりました。

①線径3.5mm×外径110mmのオイルパッキン(eBayでRed Silicone O Ring Seals Tree 110mm x 104mm x 3.5mm、2本で送料込147円)

②セリア 4号サイズ用ケーキ型の底板(3個、324円)

③直径75mmキャスターベース(266円)

④長さ35mmステンM6ボルト+チェンジノブ(30+98円)

⑤M6ボルト用キーパーワッシャー(236円)

⑥M6直径20mm握り玉(65円)

⑦セメダイン・スーパーX接着剤(298円)

購入先によって多少の金額差があると思いますが合計で1,500円程度で、集めることができると思います。





組み立て方は、

①ケーキ型の底板3枚は、薄いので、慎重に1.5mm~6mmまでのドリルで真ん中に少しずつ穴を大きく開け、最後はやすりでバリ取りを行う。

②キャスターベースの真ん中に1.5mm~6mmまでのドリルで真ん中に少しずつ穴を大きく開け、最後はやすりでバリ取りを行う。

③ケーキ型の底板2枚それぞれに凹面にキャスターベースをエポキシ接着剤でM6ボルトが通る状態で接着する

④オイルパッキンの片側を紙やすりで表面を荒くする

⑤オイルパッキンを接着したいケーキ型の底板の凸側のパッキンが当たる部分にスーパーXを塗布する

⑥仮止め用にスーパーXを塗布していないケーキ型の底板を用意し、2枚の底板の凸側同士を向き合って仮止め用に適当なM6ボルトでパッキンがちょうど入る隙間を開けておく

⑦表面を荒くした側のオイルパッキン面と接着剤を塗布した側の底板を合わせながら、隙間にパッキンを伸ばしながら入れる

⑧均一に入り、底板の凸部分に引っかかっていることを確認した後、ボルトを少し閉めて、パッキンが少し押される状態で一晩おく



⑨接着剤が固まったら慎重に仮止め側の底板とパッキンの間を薄いドライバなどで少しずつ外す

⑩接着剤が不足気味の部分にスーパーXを少量充填する

⑪もう一枚の底板も同様にパッキンを接着する

⑫握り玉のボルトの口をやすりで2~3ミリ削り、1枚の底板のキャスターベースにエポキシ接着剤で接着し、ナットと一体化する

⑬M6ボルトをチェンジノブに入れ、キーパーワッシャーを通す、ナットを取り付けていない底板を入れる、レコード盤を通し、ナット付の底板でしっかり締めて、防水が完了する



ボルトがレコード盤の穴を傷つけないように、適当な直径の熱収縮チューブを適当な長さに切って、保護するようにしています。


これで、LP盤用のレコードレーベルカバーが完成です。この他に、洗浄剤は、50ccの水にマジックリンを5~10滴、システマ歯ブラシ、水拭きにに「セリア 毛羽立ちにくいコットンパフ」、レコード盤を乾かす「セリア ワイヤーふきんかけ」とレコード盤の穴に入れて乾かすための割りばしを用意しました。



洗浄作業は、テーブルに段ボール用の荷造りテープを1巻置き、その穴にナット付の底板をかぶせて、作業しやすいようにします。あとは、洗浄液をシステマ歯ブラシで優しく円周状に垂れない程度にブラッシングします。



何周か回して汚れを落とし、反対側も同じ要領できれいにします。浄水器の水で洗剤を洗い流した後、コットンパフで水をふき取り、割りばしとワイヤーふきんかけにレコード盤3枚まで吊るし乾燥させます。今回は、100円均一に結構お世話になりました。


せっせと水洗いしたところ、レコード盤は、キラキラと非常にきれいになりました。併せてレコード盤の内袋とジャケットカバーを新調しました。その後着いたほこりには、オーム電機「レコード除電ブラシ」がおすすめです。

(再クロール更新:2022/12/22)

アナログレコードをハイレゾで楽む~悩ましいOPAMPのDC出力電圧

2020/04/24

 今回のRIAAフォノイコライザーは、DCアンプ動作が基本となるので、無音状態のカートリッジを接続しても、DC出力電圧が発生してします。好ましくないため、LT1028Aおよび、LME49710の選別で、ある程度低減できましたが、電源投入後のふらつきと、MM/MCの切替で変わってしまうなど、問題が残ります。


今回使用したLT1028Aデータシート中の応用回路例では、DCカットコンデンサー入っていませんでしたので安心していましたが、気になったのでデータシートを調べてみると、LT1028Aはバイアス電流が、±30nA(Typ.)と思ったより少ない値でした。ところがLT1028Aの入力段トランジスタのバイアス電流は、雑音特性を良くするため、なんと4.5uA必要になっているようです。さらに調べてみると内部バイアス電流補償回路で、±30nA(Typ.)に抑え込んでいました。


ここで、30nAでもMMカートリッジでは、500Ω程度の直流抵抗があるため、15uVのオフセット入力電圧を発生させてしまい、MMでは、1,000倍の直流ゲインがあるため、15mVのDC出力電圧を発生させてしまいます。MCでは、10Ω程度の直流抵抗があるため、影響は少なくなります。いずれにしても、カートリッジに直流電流が流れることになるので、好ましいわけではありません。


FET入力OPAMPに乗せ換えると、バイアス電流が減りMMカートリッジでは、出力電圧の問題はありませんが、MCカートリッジの雑音特性が犠牲になります。悩ましいことです。


そこで、外部バイアス補償回路を考えてみることにしました。MMカートリッジを接続していない状態で、入力端子のオフセット電圧を測定すると、-0.8mV~-1.1mV(47KΩに発生するバイアス電圧)でした。この値であると、20nA程度のバイアス電流の吸い込みがあることが計算で求まります。具体的な外部バイアス補償回路は、入力抵抗47kΩのGND側にわずかな補正電圧をかけ、バイアス電流を相殺させることにしました。±50nA程度までトリマで調整できるようにしたところ、±0.1mV以下に追い込むことができましたので、2nA以下にできたことになります。補正電流の生成には、雑音源となる可能性があるツェナーダイオードではなくJFETによる定電流源を用い、さらに分流させて100Ωのトリマ抵抗に流し込みました。


さて、入力側でOPAMPのバイアス電流に注目しましたが、同じように出力側でよく問題になるのは、入力オフセット電圧です。これは、電源電圧・温度・個体差によってかなり変化します。今回のイコライザーは、高いゲインのDCアンプ構成ですのでなおさらです。オフセット電圧が小さい個体を選びましたが、オフセット電圧は、ふらつきが大きく、数10mVをうろうろしていました。これまた出力にDCカットコンデンサーを入れている例がありますが、音質に影響が出る可能性がありますので。DCサーボ回路を追加して、抑え込むことにしました。DCサーボといっても、OPAMP、抵抗、コンデンサーが必要で、オーディオ信号が積分されるため、歪源になりかねませんので、

①比較的低オフセット電圧で、オーデイォ用のOPAMPを使用する

②コンデンサーは、オーデイォ用を使用する

③ノイズ混入を避けるためフィードバックポイントは2段目のOPAMPの入力にし、ゲインを0.2倍程度に設定する(補正電圧範囲は±20%で、応答時間が5倍になる)


これで、雑音特性を犠牲にせず、数mVのオフセット出力電圧に抑え込めました。これで入力・出力コンデンサを不要にできました。下記が最終回路になります。



当初は、MMCF10基板のみで実現する予定でしたが、想定より多くの追加回路が必要になり、2つの外部基板を追加しました。スペースが限られているため、ユニバーサル面実装基板を用いました。全回路を1枚の基板にできたらいいのにとも思いました。


下記は、少し混雑ぎみのケース内部です。



PCで、192KHz24bitサンプリングを行い、用意しておいた「メンデルスゾーンのバイオリン協奏曲」とGrado Blue2で周波数スペクトル分析すると、Grado Blue2は、スペック通り、結構高い周波数まで伸びていました。ただ、PCによるサンプリングでは、PCが発生する雑音が回り込み、評価しにくいことがわかりました。


そこで、準備しておいた格安の中古TASCAM DV-RA1000HDを登場させることにしました。

デジタルサンプリング後、周波数分析ソフトウェア「WaveSpectra」で目視確認しました。

ピーク表示機能を使うと、周波数特性がきれいに出せます。


問題なくデジタルサンプリングできることがわかりましたので、SN比を計測してみることにしました。ターンテーブルにカートリッジを装着し、モーター駆動なしで電源を入れた無信号状態の信号を30秒間サンプリングしました。


下記は、MMカートリッジの場合です。



下記は、MCカートリッジの場合です。



外来ノイズ込みで、MMカートリッジの場合、-112dB@1KHz、MCカートリッジの場合、-98dB@1KHzでした。特定のノイズピークもなく、きれいな特性ではないでしょうか。


イコライザーの標準最大出力電圧を-6dB@1KHzに設定していますので、MMカートリッジの場合、SN比106dB@1KHz、MCカートリッジの場合、SN比92dB@1KHzとなります。当初の目標を十分クリアできているのではないかと思います。

(再クロール更新:2022/12/22)

アナログレコードをハイレゾで楽む~MM/MC フォノイコライザーの設計・製作

2020/04/23

 アナログレコードを聞くためには、フォノイコライザーが必須です。性能が良いMM/MC対応RIAAイコライザーは、価格が高いので、自作することにしました。


設計目標は、

①MC/MM対応とする

 SWで、入力インピーダンス(100Ω~47KΩ)・アンプゲイン(60dB~40dB@1KHz)を切り替える

②電源ノイズを最小限にするため、電池駆動とする

 006P型リチウムイオン電池を2個搭載し、電源電圧を±7.4V(公称)とする

③電池電圧が限られているなかで、十分なダイナミックレンジを確保する

 CR型であると、初段アンプの出力電圧が確保できないためNF型にする

③入手可能なRIAAイコライザ基板を活用する

 eBayからMMCF10という1回路OPAMPを4個使用したNF型基板が見つかったので、採用する

④RIAAの偏差を入手可能なCR部品でDC~100KHzで±0.2dB偏差で回路設計する

 RIAAネットワークに若松通商から、27KΩ(F)、3.9KΩ(F)、0.027uF(G)、0.082uF(F)を採用する

⑤MCカートリッジ用として、SL-10の仕様S/N比70dB@1KHz以上を目標とする

 低ノイズOPAMPの中から等価入力ノイズ電圧0.1uVを達成できる、LT1115または、LT1028Aを採用し、MCカートリッジ出力電圧に対するS/N比72dBを確保する

⑥念のため、サブソニックフィルターを使用できる


下記は、オリジナルのMMCF10基板です。



参考までに、オリジナルのMMCF10イコライザー部回路ですが、MM専用です。。



MMCF10基板は、RIAAイコライザーとAC整流+3端子レギュレーターから成る電源部分からできていますが、今回は、リチウムイオン電池を使用するので、不要な電源部分をカットします。また、NFフィードバック回路が異なるため、箔カットとドリル穴開けを追加します。これくらいの改造で済むのはありがたいことです。


LTSpiceでシミュレーションを行い、下記のようなRIAA EQ回路としました。



さらに、次の電源回路(リチウムイオン電池の充電回路)ユニバーサル基板で組み立てました。



次に、006P型リチウムイオン電池2個、トグルスイッチ(MM/MC切替、サブソニックフィルター切替、充電+電源)、RCAジャック、ACアダプター用DCジャック、GND端子、LEDなどの部品を格納できるケースを選定します。できるだけ小型にまとめるため、タカチのMB型アルミケース【MB11-3-14】(旧型番:MB-52)高さ:30mm・幅:110mm・奥行:140mmを選定しました。


電源スイッチには、トグルスイッチ 4極 ON-OFF-ON【MS500RB】を使用しました。ONポジションでイコライザーに電源を供給し、片側のみのONポジションで、充電回路を接続する構成にしました。MM/MC切替、サブソニックフィルター切替には、トグルスイッチ 4極 ON-ON【MS500PB】を使用しました。スイッチの使用感を合わせるために、サブソニックフィルター切替は、2回路のみの使用としました。


下記は、その外観です。


(再クロール更新:2022/12/22)

アナログレコードをハイレゾで楽む~Technics SL-7、Kenwood KP-727の整備

2020/04/22

 まず、Technics SL-7の補修です。

まずオーナーマニュアルとサービスマニュアルを探しダウンロードしました。動作状態は、例のごとくアームドライブのゴムベルトが硬化してスリップ状態でしたので、千石電商から1.2mm□、25φのゴムベルトを入手し、交換しました。次は、ビスに付属のゴムワッシャーの交換です。パソコンHDD用のゴム付インチビスのゴムを流用しました。さらに、内部基板類をチェックし、電解コンデンサーの液漏れ等がないことを確認し、問題があれば交換します。幸い、問題ありませんでした。


最後は、内部清掃と汚れ・擦り傷落としです。マジックリンの雑巾で内部清掃を行います。次にキャビネット・コードの汚れ・擦り傷をマジックリン・レクトラクリーン・プラスティックコンパウンドできれいにし、黒マジックでタッチペイントして終了です。


次は、Kenwood KP-727の補修です。

残念ながら、オーナーマニュアルとサービスマニュアルは、見つかりませんでした。動作状態は、同じくアームドライブのゴムベルトが硬化してスリップ状態でしたので、千石電商から0.95mm□、25φのゴムベルトを入手し、交換しました。

次に、補修が必要な部分は、ゴム足です。ゴム足がひび割れ、高さがつぶれ気味の足もありました。補修は、まず、靴底補修接着剤(シューズドクターN)をひび割れ部分に精密ドラーバーや楊枝で塗り込みます。これで全体的に強度が戻ります。高さがつぶれた足には、1mm厚のゴムをリング状に切って、同じ接着剤でカサ上げをし、4本の足の高さを調整します。さらに、内部基板類をチェックし、電解コンデンサーの液漏れ等がないことを確認し、問題があれば交換します。幸い、問題ありませんでした。


最後は、内部清掃と汚れ・擦り傷落としです。マジックリンの雑巾で内部清掃を行います。次にキャビネット・コードの汚れ・擦り傷をマジックリン・レクトラクリーン・プラスティックコンパウンドできれいにし、黒マジックでタッチペイントして終了です。


両者ともに、レコード針は、古くなっていたり、針が折れていたので、eBayで、互換針を発注しました。

(再クロール更新:2022/12/22)

アナログレコードをハイレゾで楽む~導入編

2020/04/21

 新型コロナで騒がしい中ですが、久々にオーディオのブログ投稿をしたいと思います。


これまで、時代の主流のCD、SACDをレトロな自作真空管アンプで楽しんできました。真空管アンプは、スピーカーとの組み合わせと、真空管や回路の種類・組み合わせにより、適度な歪と出力インピーダンスによって、微妙な臨場感・音色を醸し出しています。


一方、CD、SACDは、マスター音源をデジタル技術を通して、ミキシングエンジニアがこれが良いのではないかと考えた再生音源に再現性高く提供してくれます。この再生音源を真空管アンプとスピーカーによる色付けで楽しんできたことになります。CDの20KHz以上の欠落周波数帯の問題の回答として、SACDが発売され、周波数帯の欠落がない良い音ではありますが、再現性が高いが故にマスター音源の良し悪しを引きついで、ある意味面白みが少ない再生音源になっているように感じられてしかたがありません。そこで、音源として色付けの範囲が広いアナログレコードを試してみることにしました。


アナログレコードもオーディオの常でピンキリの世界です。最小限の原資と自己努力(自己満足)が活かせ、お手軽に楽しめる導入計画を練りました。


まず条件を考えてみました。

①アナログ技術が成熟していた往年の機器であること

②機械的な劣化が致命傷になりにくい技術であること

③レコードカートリッジの針が入手できること

④CDのように手軽な操作・メンテナンスができること

⑤デジタル技術で、基本性能の評価を行い、良い音にできること


以上より、ヤフオクなど調べると、ターンテーブルの成熟期に各社が発売したリニアトラッキング方式 レコードプレーヤーがお手軽であることがわかりました。特に、ジャケットサイズのTechnicsのSL-10は、成熟したDDドライブとカートリッジを採用し省スペースで魅力的でした。ところが問題は、MCカートリッジであるため、レコード針の交換ができません。そこで、レコード針の入手性が良いMMカートリッジを搭載したTechnicsのSL-7にターゲットを絞りました。リニアトラッキング方式の場合、T4P規格というメーカー間の互換性が高いカートリッジが使われていますので、この点も評価できます。(反面、高級なカートリッジではありませんが、お手軽さには合っています。)


このSL-7は、MMカートリッジ(EPC-P202C)を採用していますが、ボロンカンチレバーのEPS-202EDが入手できないので、周波数特性を考えると、MCカートリッジも非常に気になりました。各社のリニアトラッキング方式 レコードプレーヤーを調べていくと、MCカートリッジを採用したKenwoodの機種が見つかりました。針交換可能なMCカートリッジ(V-57、AT312EPのOEM)を採用したKP-727です。交換用の針は、eBayで入手可能でした。EVGのPM2323Dですが、中身はAudio Technicaのオリジナルのようです。


それぞれ、ヤフオクとメルカリから動作不良のジャンク品を中古カートリッジ価格相当で入手しました。以上で、①~④が実現できます。⑤については、Ortofonの「Test Record」を使い、パソコンのサウンドキャプチャ機能+「WaveSpectra」で解析することにしました。

(再クロール更新:2022/12/22)