マイクロカラーテレビ「TR-101CT」の修理 ~ 電解コンデンサの罠

2022/12/17

 久しぶりのアップになりました。

松下電器産製 Nationalブランド1983年製造の「カラー Solo ナショナル マイクロテレビ 1.5型 TR-101CT」の修理です。グッドデザイン賞受賞モデルだそうで、手のひらに乗る重さ600gのブラウン管カラーテレビです。ただし、充電電池8本を入れると、1kgに近づきますが、手のひらサイズには変わりがありません。

このモデルは、当時、主に産業向け製品を生産していた藤沢テレビ事業部が産業向けブラウン管技術を使用した民生用小型ブラウン管(超微細ドットピッチ0.25mm)を開発し、世界でもっとも小さなブラウン管カラーテレビとして、世界展開したようです。いまでも中古市場で人気があるようです。


ところが、野心的に小型化するため、小型電解コンデンサを多用しているため、今回のように、まともに動作する中古が少ないと思われます。小型電解コンデンサの劣化モードの検証と修理を行い、地デジチューナのアナログ(コンポジット)出力をUHF変調し、無線アンテナ経由で部屋の好きな場所で見ることができるようにしました。パソコン作業中にテレビを横目で見れるようにもなりました。


まず、TR-101CTの入手です。当時は、回路図・基板パターン図が添付されていましたので、これが付いているもので、電池漏れがないものをヤクオフで落札しました。

TR-101CTの状態は、チューニング位置によってブラウン管がわずかに発光し、ノイズ音声がでました。外部ビデオ入力をしましたが、ほとんど画面の変化はありませんでした。最初は、調整で逃げ切れるかもしれないと思っていましたが、基板の状態を確認すると、やはり電解コンデンサの液漏れが所々で発生していました。この時期(80年代製品の修理では注意)、電解コンデンサの小型化・低等価直列抵抗化を進めるために「第四級アンモニウム塩」の電解液が使用され始めたようで、強アルカリ電解液であるため、電極酸化膜のピンホールによる性能劣化、ゴムパッキンの劣化による漏液でプリント基板銅箔の腐食に進行してしまいます。


全電解コンデンサを交換するのが万全ですが、本数が多いので、劣化した電解コンデンサを特定し、交換することにしました。また、プリント基板銅箔の修復もせざるを得ない状態でした。

①劣化電解コンデンサの特定と交換

・小型品の電解コンデンサ(特に低電圧・大容量)

・リップル電流が大きい初段平滑コンデンサ

・リード線が変色している電解コンデンサ

・リード線が変色していなくても、上記品と同じ電解コンデンサ

以上を取り外し、LCRメータで、特性確認すると、大半が不良でした。検査した電解コンデンサの状態を参考までに、掲載します。


容量抜け・高周波特性劣化・漏れ電流増加・ESR増加など、典型的劣化パターンが網羅できそうです。びっくりでした。


②プリント基板銅箔の腐食部分の修復

電解液漏れで変色してしまっている銅箔部分のレジストを工作ナイフで削り、銅箔をむき出し後、銅箔の腐食膜を削り、正常に導通できているか確認します。もし切断部分があれば、銅箔(銅線)でブリッジして銅むき出し部分全体を半田メッキします。

今回は、IC301の下部の銅箔が腐食していたので、IC301を取り外して修復しました。


③ブラウン管関連の調整

電解コンデンサの問題が大半で、他の部分は問題ないことが多いため、ブラウン管関連の調整のみを行いました。ブラウン管ドライブIC302の左上2つのドライブトリマを左にいっぱいに回し、右側縦2つのカットオフトリマを左にいっぱいに回します。これで緑のみが表示されることになります。

適当なビデオ入力をして、本体の右側の"Color"最小、"Bright"中央、"Contrast"最大に調整して白黒画面表示にします。フライバックトランス部上部のブラウン管に近い方のスクリーン調整ボリウムを適当に回し、緑色画面がきれいに出るようにします。

この状態でIC302の右側縦2つのカットオフトリマを徐々に右側に回し、暗い部分が白色発光するようにします。次に、IC302の左上2つのドライブトリマをを徐々に右側に回し、明るい部分が白色発光するようにします。さらに、明るさに関わらず全体に白色発光するように上記を繰り返します。


以上でうまくテレビが動作しない場合は、別途、オシロスコープ等で、問題を解決する必要があります。


④アナログ(コンポジット)高周波変調器

ゲーム用のRF変調器を流用することも考えましたが、VHF帯のみにしか使えないので、アマゾンや、eBayの「RCA-RFアダプター ビデオコンバーター」を改造しました。写真のように出力ポート側にもスイッチがついている製品が必要です。この製品は、元々中国向けの製品で、出力周波数や、ビデオ形式が日本向けNTSCではないので、内部のマイクロコントローラを入れ替える必要があります。また、ケーブル接続を前提にしているため、出力電圧が10uV台と微弱になっています。

そこで、日本のNTSCに対応してL-VHS、H-VHS、UHFの切り替えとチャネルL/H切替をできるようにするため、内部のMC44BS373類似の中華モジュレータのプログラム内容をキャプチャし、日本向けプログラムをするPIC12F1822ファームウェアを作成しました。

参考までにRFモジュレータファームウェアを公開します。


オリジナルのマイクロコントローラを外して、PIC12F1822の電源端子極性を間違わないように入れ替える必要があります。スペースの余裕があったので、DIPソケット経由でジャンパ配線を行いました。また、RF出力をアンテナから飛ばすことができるように20dBゲインのLNA(NBB-500等、適当なMMIC)をカスケード接続で40dBまでブーストし、1mW弱程度(電波法令の小電力規制内)の出力をUHF用受信アンテナに給電して部屋内部で見ることができるように電波を飛ばしました。



結構苦労しましたが、目論見通りできました。参考にしてもらえればと思います。

(再クロール更新:2022/12/22)